研究概要 |
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)のβ-ラクタム剤耐性に影響を及ぼす因子を明らかにするため,トランスポゾン(Tn551)挿入によりMRSAのβ-ラクタム剤耐性を減少させる変異株を分離し、トランスポゾン挿入領域の遺伝子領域を決定し、これらの因子をfmtA,B,Cと名付けた(平成10年度)。また,得られた変異株の性状についても検討したが、親株と著名な変化は認められなかった(平成10年度)。そこで、さらにこれらの因子について検討を加え、以下の結果を得た。 (1)MRSAおよびメチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)それぞれ10株ずつについてこれらの因子(fmtA,B,C)の存在の有無をPCR、サザンハイブリダイゼーションにて検討した結果、すべての株においてこれらの因子の存在を認めた。 (2)fmtAおよびfmtBに関して、リコンビナントタンパクを作製後ウサギに免疫し抗血清を得た。得られた抗血清を用いたWestern Blottingの結果、FmtAタンパクは細胞膜に、FmtBタンパクは細胞壁ペプチドグリカン層にその局在を認めた。また、FmtAは各株間での発現量に差は認められなかったが、β-ラクタム剤添加により発現量が増大した。FmtBは一部の株で分子量の小さいタンパクとして認められたが、β-ラクタム剤添加による変化は認められなかった。FmtBの分子量の違いと感受性には著名な傾向は認められなかった。 (3)fmtAおよびfmtBに挿入されたTn551をMRSAであるCOL株より分離したバンコマイシン耐性株に導入したところ、バンコマイシンの感受性の増大が認められ、これらの因子はメチシリンの感受性のみならずバンコマイシンの感受性にも影響を与える因子であることが考えられた。
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