研究概要 |
CD72は45kDaのタイプII膜貫通型タンパク質で、細胞外ドメインにCタイプレクチンドメインを持ち、ホモダイマーを形成する。その発現は形質細胞を除くB細胞に広く分布し、B細胞の増殖に関わっている。CD72の細胞内ドメインには2つのITIMが存在し、ITIM1にはチロシンフォスファターゼSHP-1が結合し、ITIM2にはGrb2が結合する。さらにCD72はSHP-1の基質となっている(昨年度報告)。CD72はWEHI231やprimaryの未熟B細胞において、抗原受容体(BCR)を架橋し細胞死を誘導する条件下でチロシンリン酸化され、逆に予めCD72を架橋することで細胞死を回避する条件下では脱リン酸化される。このことは、細胞死とCD72のチロシンリン酸化が密接に関連していることを示唆している(Wu,Fusakiら,Curr.Biol,1998)。しかしながら、CD72が細胞死を制御している詳細な機構については未だ不明であり、CD72に結合するシグナル伝達物質の検索はこの機構を解明するために必須である。今年度研究代表者らは、アダプター分子であるBLNKがBCR刺激後にCD72と結合することを見いだした。またCD72の2つのITIM変異体(YF)とGrb2のSH2,SH3変異体の解析から、CD72のITIM2とGRb2のSH2が会合し、Grb2のSH3ドメインとBLNKが会合することによってCD72/Grb2/BLNK複合体が形成されることを明らかにした。BLNKとCD72の会合は、BCR刺激後のアポトーシスを誘導する条件下でのみ起きることから、BLNKが従来言われていた活性化シグナルだけでなく、アポトーシスにも関与することが示唆された(Fusaki,N.ら,Eur.J.Immunol,in press)。
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