研究概要 |
夜間断眠中の照明の照度と色温度の違いが脳波,体温,主観的覚醒度に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした実験を行った.被験者は睡眠覚醒リズムに異常のない健常な成人男性6名(平均年齢23.4±2.5歳)であった.照明条件は100lux-3000K(暗条件),1000lux-3000K(明3000K条件),1000lux-7000K(明7000K条件)の3条件とした.被験者は午後9時から午後10時30分まで暗条件に暴露された後,それぞれの照明条件に午前4時まで暴露された.照明暴露中は1時間毎に閉眼安静時の脳波(2分間),直腸温,主観的眠気の測定を行った.閉眼時脳波からは周波数分析によりα波帯域のパワー値を求めた.閉眼時α波は時刻が進むにつれて低下するという夜間の変動が認められた.照明条件の違いによる影響は,明7000K条件>明3000K条件>暗条件の順で高いα波パワー値を示した.この傾向は午後11時から午前1時の間で顕著であり,午前2時以降は差が小さかった.直腸温も夜間低下していた.照明の影響は,明3000Kと明7000K条件で暗条件に比べで高い直腸温を示したが,色温度間では違いがなかった.主観的眠気は暗条件で他の明条件に比べ高い値を示した.色温度間では明7000Kで明3000Kに比べ主観的眠気が低かった.本実験結果より,照明の照度が夜間の覚醒度と体温の変動に影響を与えることが明らかとなった.また照度だけでなく色温度も断眠時の覚醒度に影響を与えることが明らかとなり,夜間の覚醒の維持には明7000K条件が有効であることが示された.
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