研究概要 |
現代社会においては、ライフスタイルの変化や職業などによって、24時間に収まらない不規則な周期で生活をする女性が増加しつつある。そこで、非24時間日周環境下における女性の生殖機能を明らかにするために、雌性動物を用いて、概日周期を延長あるいは短縮させて性周期および卵子形成に及ぼす影響を検討した。前年度では、概日周期を延長させた26時間日周期(明期:暗期=13時間:13時間)では、排卵のリズムが乱れると共に、卵子における姉妹染色体の早期分離が観察された。本年度は、若年マウス(ICR/Jcl)を概日周期を短縮させた22時間環境(明期:暗期=11時間:11時間)に馴化させ、性周期の長さ、排卵時間、および卵子染色体などを観察した。まず、膣垢を採取して性周期を観察したところ、性周期の延長がみられた。排卵時間は、発情期にあるマウスを定期的に屠殺して排卵の有無によって調べたところ、排卵時間の短縮がみられ、排卵は暗期の中点1,2時間後には終了していた。これらの影響は、26時間日周期でみられた影響と類似していた。また、Dyban法を用いて、排卵直後の未受精卵の染色体標本を作製した。この結果、22時間日周期において、染色体の数的異常は確認されなかったが、本来この時期では観察されないはずの姉妹染色体の早期分離が、少数ではあるが、みられた。この早期姉妹染色体分離は26時間日周期でも観察され、これは減数分裂第二分裂で染色体の数的異常を招く可能性があり興味深い現象であった。以上のように、日周期を延長あるいは短縮すると、雌性動物において排卵や卵子形成への影響が認められた。日周期の変化による排卵時の生殖リズムのずれが観察された原因としては、メラトニンやホルモンの分泌への影響が考えられるが、その機構は不明であり、今後の課題としたい。
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