研究概要 |
平成10年度には、ある特定の日の生活習慣(行動および食事)を評価するためのシステムの開発を行った。すなわち、日常の行動内容(食事記録では食事内容)を被験者がコードおよび時間(食事記録では量)で記録し、それをコンピューターに入力すると各行動種別消費エネルギー量(食事記録では三大栄養素別摂取エネルギー量)が自動計算されるソフトプログラムを作成した。 平成11年度には、大学生81名を対象に、2日間の行動記録をgold standardとし、それとの一致性をみることにより身体活動度調査票(PAQ)の妥当性を評価する研究を行った。PAQにおいて、通学、運動、アルバイト、不活動、睡眠の各項目別のスコアを算出し、行動記録における各行動の消費エネルギー指数(強度と時間の積)との相関分析を行った。さらに、PAQの各スコアを説明変数、行動記録の総消費エネルギー指数を目的変数とした回帰分析を行った。通学およびアルバイトについては行動記録とPAQの間に高い正の相関を認めた(r=0.89 and 0.65,p<0.001)。睡眠においても有意な正の相関を認めた(r=0.30,p<0.01)。運動に関しては、日々定期的に行っている者が少なかったため相関は低かった。回帰分析では、通学、運動、バイト、不活動の4項目が抽出された(行動記録による総消費エネルギー指数=0.44×通学スコア+0.44×運動スコア+0.19×バイトスコア-0.35×不活動スコア+2300,r=0.55,p<0.001)。以上の結果より、今回用いたPAQは妥当性が高く、大学生の日常生活を評価するツールとして有用であることが示唆された。 今後、肥満大学生に対する生活習慣への介入研究を行っていく上で、本研究において開発された行動、食事記録ソフトは介入群に対するモチベーション維持のための、またPAQは身体活動における行動変容を評価するツールとして用いる予定である。
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