研究概要 |
(課題1)社会経済状態と健康に関する研究の国際的到達点をふまえたわが国での実証研究に向けた概念枠組みの形成 社会経済状態と健康に関する研究は,欧米諸国では1970年代以降膨大な研究が行われている。その背景には各国の社会的現実、例えば,英国では職業別の階層間の平等が社会的課題であり,米国では教育水準や人種による格差の問題がある。この問題をめぐって公衆衛生学のみならず,経済学・社会学等の社会科学による研究が行われている。方法論や理論についての最近の発展としては,時系列蓄積データによる研究,ライフ・コースに即した研究がある。欧州では国際協同研究も組織されている。近年では、経済学における所得、社会学における人種に加え、政治学における社会的資本(Social Capital)概念が導入され、学際的な研究が進んでいる。 これら、欧米の研究から学ぶべき点として,社会経済状態がいかに健康状態に影響していくかについての理論とそれを科学的に研究していくための方法論、社会経済状態の構造的把握がある。この点では,わが国においては主に社会学における社会階層研究の蓄積があり、それらを生かしていくことが求められる。 (課題2)社会経済状態と健康に関するわが国での実証研究の実施 社会経済状態と健康に関する実証研究については、職業生活・学歴・所得等詳細な事項に関する調査が必要であり、具体的には面接による調査が必要だと考えられた。しかし、研究期間と予算の範囲内で実現可能な調査として、郵送による調査を行った。ある中規模地方公共団体の住民から無作為抽出によって選び出した40-50歳代の住民約1000名を対象として、性、年齢、健康状態(Euro-QOL)、健康に関連した行動・習慣、所得、雇用状態、などからなる調査票を郵送した。結果については、集計中である。
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