研究概要 |
1.方法 乳幼児急死例の剖検例18例を対象とした。各症例の肺について、最低左右上・下葉の4カ所から、ホルマリン固定、パラフィン包埋組織標本を作成した。これらの各標本について、昨年度までの研究で、吸引されたミルクの検出に最も適切と考えられた抗ヒトαラクトアルブミン(抗αLA)抗体(DAKO)を用い、DAKO社製LSABキットにより免疫染色を行った。 陽性反応が認められた症例については、光顕、強拡大(対物×40)でメカニカルステージをスクロールさせ、全視野(対象の大きさにより、149-578視野)を検鏡し、吸引されたミルクと考えられる陽性反応物の存在する視野の割合(陽性率)を各プレパラートごとに調べ、同一症例における各プレパラート間のばらつきや各症例間の差を統計学的に比較した。 2.結果および考察 18例中10例で抗αLA抗体に対する陽性反応が認められた。各症例の平均陽性率は、最大65.3、最小0.63%と非常に大きかった。同一症例の各プレパラート間の分散は、各症例間の分散より優位に高く(Kruskal-Wallis 検定,p<0.0001)、この方法により各症例間のミルク吸引量の相対的な比較が可能であることがわかった。また10例中3例は他の症例と比較し非常に吸引量が多く(Mann-Whitney 検定,p<0.05)、ミルク吸引が死因に大きな影響を及ぼしている可能性が考えられたが、ミルク吸引の意義付け、特に乳幼児突然死との関係については異論も多く、今後症例数を増やしてさらに検討することとした。
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