研究概要 |
本研究は、非ホジキンリンパ腫(NHL)腫瘍細胞に特異的に発現する遺伝子を、Differential Display法によって同定し、病態との関連を明らかとすることを目標として開始された。その結果我々は、chromosome check point kinaseとして既に報告のあるSTK15/BTAK遺伝子を分離した。このSTK15/BTAKは、正常B細胞とNHL臨床材料を比較したNorthern blotにおいてnormal B(n=4,relative intensity(RI)=1.0),indolent(n=2.RI=0.50),aggressive low(n=3,RI=0.47),aggressive high(n=3,RI=1.29),highly aggressive(n=3.RI=2.88)と、臨床的に悪性度の高いB細胞NHLに強く発現することが我々の実験において確認された。更に、慢性リンパ性白血病(n=3)においては検出感度以下の発現であった。またこれら臨床材料を用いたSouthern blotにおいてSTK15/BTAKのgene copy数には差を認めなかった。以上の結果から、この遺伝子の発現量はNHLの臨床的な悪性度に関与し、その過剰発現は、細胞内での翻訳・転写の増大に関連していることが示唆された。今後は、この遺伝子の過剰発現が、NHLの病態に如何に関与するかを検討する目的で、センスならびにアンタイセンスSTK15/BTAK遺伝子を、pRc/CMV発現ベクターにサブクローニングした後、NHL B細胞株にトランスフェクションする。そして、この過剰発現ならびにノックアウトB細胞株の染色体異常や増殖能を検討することで、STK15/BTAK遺伝子のB細胞発癌における役割を検討する予定である。更に、このトランスフェクタント(NHL細胞)をSCIDマウスに摂取し、in vivoでの細胞増殖能・腫瘍化を検討する予定である。
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