研究概要 |
全身性エリテマトーデスは活性化T細胞が病態の主座を成していると考えられている。そこで、T細胞の活性化における細胞内シグナル伝達因子として重要なC cbl(chromosome 11q-23、2718bp、906aa)を疾患感受性候補遺伝子と考え、日本人全身性エリテマトーデス(SLE)患者64名及び健常対照者40名のcDNAを用いて変異の検索を行った。RT-PCR-SSCP法を用いた変異検索により1400〜1600bpの部位に多型性を認め、SLE患者2名について、direct sequenceを行ったところ、alternativesplicing siteがある可能性が示唆された。しかしながら正常人でも同様の多型性が認められ、SLEに特異的な変異かどうか検討中である。本研究中にc-cblのホモログであるb-cblがCD28依存性のT細胞活性化を制御するという報告がされた(Y.J.Chiang et al;b-cbl regulates the CD28 dependence of Tcell activation,Nature 43,216-220,2000)。そこで b-cblのgenomicDNAについて再検中である。 (2)自験SLE160例、全国調査124例、計284例について、HLA classII遺伝子によるSLEの病型分類との関連について解析を行った。その結果、軽症腎炎(WHO分類クラスII)を認める症例は重症腎炎(クラスIV)に比べ、DQA1*0101,DQB1*0501が有意に多かった。そこで我々は、HLA既知の腎炎症例の経過について検討したところ、SLE診断後2年以上たっても軽症腎炎に留まる症例は同様にDQA1*0101,DQB1*0501を保有する確立が高いことがわかった(当施設と熊本大学免疫識別学教室西村泰治教授らとの共同研究)。今後症例数を増やして、SLEの病型分類がHLA classII遺伝子によって規定されている可能性を検討し、cblの多型性との関連の解析を行いT細胞機能、自己抗体産生及び病態に及ぼす影響について解析中である。
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