研究概要 |
我々は、ヒト肝組織と免疫担当細胞をNOD/SCIDマウスに同時に再構築したC型肝炎モデル(第85回日本消化器病学会総会、1999年アメリカ消化器病学会にて発表)を用いて、C型肝炎ウイルスの増殖機構、肝組織障害機序の解析、IFN誘導遺伝子の解明を目的として研究を行い、現在までに以下の成果を得ている。 1)これまでに、ヒト正常肝組織、およびC型慢性肝炎肝組織を、NOD/SCIDマウスの腎被膜下に移植し、移植後6週後までの肝組織の生着を組織学的、免疫組織学的に確認した。また、上記マウス血清において、RT-nested PCR法およびReal-time detection PCR法(TaqMan PCR法)により、C型肝炎ウイルスRNAを検出し、新しいC型肝炎動物モデルとして発表してきた。2)今年度は、上記のモデルにおいて、末梢血リンパ球との同時再構築にも成功し、さらに現在、正常肝組織移植後のHCV初感染モデルの作製を試みた。正常肝組織移植後に患者由来の血清の他、感染性のcDNAcloneの培養上清を投与し、マウス血清中のHCV RNAを経時的に測定し、さらに取り出した移植片中のHCV RNAをin situ PCR法にて確認することに成功した。4)次に患者末梢血リンパ球より、ウィルス由来蛋白(Core,E1,E2,NS3-5)に対する特異的CTLクローンの樹立し、今後、これらのCTLクローンを肝炎モデルマウスに静注することでの肝組織障害の増強の有無や、Th1、Th2サイトカインの変動について検討中である。さらに治療法の開発に向けて、IFN誘導遺伝子を肝細胞特異的に発現させる系を確立し、最終的には特定のIFNstimulated genesの肝細胞強制発現による遺伝子治療を目指す。また、長期観察例での癌遺伝子発現異常についても検討中である。
|