研究概要 |
大腸内視鏡検査を受ける潰瘍性大腸炎(UC)患者を対象とし,その臨床的,内視鏡的,組織学的な活動性を記録し,UC患者より血清,尿,大腸粘膜組織を採取して分析を行っている。 血清,尿中の一酸化窒素(NO)濃度をGriess反応に基づいて測定し,血清中のTNF-αをELISA法で,核マトリックス蛋白(NMP)をEIA法で測定し,NMPレベルの上昇例では血清よりDNAを抽出してアガロースゲル電気泳動を行い、DNAの断片化が血清レベルに反映されるか検討した。 活動性のUC患者の中でも未治療例ないし増悪期にある症例においては尿中のNOは高値を示していたが、改善傾向ないし寛解例では尿中のNOレベルは健常人と同等であった。また,NMPについてもNOと同様に活動期で有意に上昇していた。血清でのNO値の検討では活動期・寛解期・健常人において有意差はなく,これは,血中のNOが速やかに尿中に排泄されてしまうためと考えた。 血中NMP高値症例において,血清からDNAを抽出したがその量は微量なため電気泳動にてバンドを表出することはできなかった。やむを得ず数人の血清抽出DNAを合わせて電気泳動にかけたところ,DNAの断片化を考えるラダーが得られたが,これが細胞死・アポトーシスを示唆するかについてはさらなる検討を要すと考えている。 また、生検組織からRNAを抽出し,iNOS,cNOSならびにFasなどのアポトーシス誘導蛋白の発現を遺伝子レベルで解析しようとしている。現在のところ,生検組織材料の量,および処置の問題があると考えられ,抽出されたRNA量は極めて微量であり,PCRを行うには足りず,今後様々な問題点を考慮して,さらなる症例の蓄積・サンプリングを行う次第である。
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