昨年度の研究で、腸内細菌叢の発達や消化管リンパ組織の形成が未熟な生後早期に虫垂切除を行うことにより、マウスのデキストラン硫酸惹起性大腸炎の腸粘膜傷害が抑制されることが明らかとなった。今年度はその腸炎抑制の機序についての検討を行った。実験は、生後2週と6週BALB/cマウスに虫垂切除またはSham手術を施行後、生後10週で屠殺し腸管、肝脾、盲腸内容物を採取した。腸管により粘膜固有層リンパ球と上皮間リンパ球を分離し、サイトカイン産生能、フローサイトメトリーによるリンパ球表面マーカーの分析、盲腸内容物の菌体成分とリンパ球との混合培養による細胞増殖応答(チミジン摂取率)を検討した。盲腸内容物での腸内細菌叢の分析も行った。その結果、生後2週虫垂切除群では、総上皮間リンパ球数が減少し、その減少はCD8aa鎖発現リンパ球の減少に起因していた。粘膜固有層リンパ球では、CD4陽性CD45RB^<low>細胞の増加に伴い、インターロイキン4の産生能が増加しインターフェロンγの産生能が減少した。また、生後2週虫垂切除群の粘膜固有層リンパ球では、自己盲腸内菌体成分に対する細胞増殖応答が低下していた。生後2週虫垂切除群の盲腸内細菌叢を調べるとバクテロイデス菌数が激減していた。生後6週虫垂切除群では、これらの変化は認められなかった。以上の結果より、大腸炎エフェクター領域におけるTリンパ球応答の変化ならびに腸内細菌叢の変換が虫垂切除マウスの腸炎発症抑制と関わっている可能性が示唆された。
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