研究概要 |
[目的] ヒト冠動脈硬化症に類似した病像をしめす遺伝性高脂血症家兎を実験動物として用いて病態モデルにおけるIschemic Preconditioning(PC)現象の発現を検討し、一酸化窒素(NO)-Protein Kinase G(PKG)系のPC現象における重要性を明らかにすることである。 [方法] 日本白色家兎(正常家兎;C)と遺伝性高脂血症家兎(WHHL)を用いて、左冠動脈前下行枝を60分閉塞180分再灌流(I/R)し、心筋梗塞範囲(IS)及び梗塞危険域(AAR)を計測して冠動脈の灌流域に影響されない梗塞範囲の指標であるIS/AAR(%IS)を算出する。各実験群において、PCあるいは薬物投与後の%ISを比較検討する.PCは5分虚血10分再灌流によって行う。C群,C群にてPCを行ったC+PC群,WHHL群,WHHL群にPCを行ったWHHL+PCの4群において、I/R後の%ISを比較する。更にPCの前後でNO合成酵素阻害薬を投与しその効果を検討する。NO供給薬(NOD)を投与したWHHL+NOD+PC群や脂溶性cGMP誘導体を投与したWHHL+GMP+PC群とWHHL+PC群で%ISを検討する。定常状態、長時間虚血前後、再灌流後に血漿Nitrite/Nitrateを測定する。心筋cGMPも測定し、さらにProtein kinases間のcross-talkをみるために心筋PKC活性を測定する。またProtein kinasesの細胞内での局在を検討するために免疫組織染色を行う。 [結果] 予備実験では、C群とWHHL群の%ISを比較するとWHHL群で梗塞範囲が大きかった。C+PC群に比しWHHL+PC群において、PCによる%ISの減少効果(心筋梗塞におけるPCの心保護効果)が消失していた。WHHL+NOD+PC群では、PCによる保護効果が顕性化する結果が得られつつある。 [結論] Ischemic Preconditioning(PC)現象の解明のために、ヒト冠動脈硬化に類似した動物モデルであるWHHLを用いることの優位性が示唆された.病態モデル心ではPC現象の発現にNOが関与している可能性が高い。
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