研究概要 |
細胞間接触による血管内皮細胞増殖の抑制は、内皮細胞を機能的成熟に導く重要な機構である。本研究では、(1)細胞間接触の受容から核における増殖制御に至る細胞質及び核内シグナル伝達系(Ca情報、蛋白質リン酸化あるいは脱リン酸化酵素、転写因子、細胞周期制御蚤白質など)を分子細胞生物学的に解明すること、(2)細胞接着因子の一つ内皮型カドヘリンとその機構複合体の形成に関与する構造を、ツーハイブリッド法を用いて明らかにすることを目的として研究を行った。 1.培養内皮細胞の増殖及び細胞周期を、Bromod eoxyuridine(BrdU)の取り込みで評価する方法を確立した。コンフルエントの細胞は、BrdU陽性細胞の割合は0.1%であり、細胞間接触の完成した時期の内皮細胞は増殖を停止していることが明かとなった(Hirano et al.,1999)。 2.静止期にある培養内皮細胞及び生体内皮細胞(大動脈弁条片)における、Ca情報伝達機構を明らかにし、血管緊張調節における内皮細胞内Ca情報伝達の役割を明らかにした(Ihara et al.,1999;Kawasaki et al.,1999) 3.内皮細胞cDNAライブラリーからミオシン脱リン酸化酵素調節サブユニット(MYPT1)をクローニングした (Hirano et al.,1999)。初めに平滑筋で同定されたMYPT1と相同性が高く、また、細胞増殖の停止に伴い細胞内局在が変化することを明らかにした(Hirano et al.,1999)。 4.静止期にある内皮細胞から作製したcDNAライブラリーから、サイクリン依存性キナーゼ阻害蛋白質p27^<kip1>の新規分子種を世界で初めて発見し、細胞間接触による内皮細胞増殖抑制に関与する核内情報伝達分子の一つを見出した(投稿中)。 5.内皮型カドヘリン、プラコグロビン、βカテニンを、内皮細胞ライブラリーからクローニングした。ツーハイブリツド法を用いて、プラコグロビン及びβカテニンとの結合に関与する内皮型カドヘリンの機能構造を明らかにした(投塙準備中)。
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