研究概要 |
悪性横紋筋様腫瘍(Malignant rhabdoid tumor、以下MRTと略す)の細胞株を用いて、増殖因子およびその受容体について調べ、そのオートクラインの詳細な特性を検討した。方法は5つの培養細胞株(TM87-16,STM91-01,TTC549,TTC642,YAM-RT)を使用し、RT-PCRによりtransformation growth factorα(TGF-α),epidermal growth factor(EGF),及びepidermal growth factor receptor(EGFR)のmRNAの発現について検索した。また、TPAによる分化誘導後にそれぞれのmRNAの定量をcompetitive PCRにて行なった.さらに、TGF-α,EGF,EGFR抗体の添加による細胞培養で細胞増殖を検討した。結果は5株のうちTM87-16,STM91-01,TTC549,TTC642の4株はTGF-α/EGFRオートクラインであり、分化誘導によりTGF-αmRNAのdown regulationを認めた。YAMRTの1株はEGF/EGFRオートクラインであり、EGFmRNAのdown regulationを認めた。しかしTTC549の1株は分化誘導によりTGF-αmRNAのdown regulationを認めたが同時にEGFmRNAの発現をも認めた。抗体添加による細胞培養ではTM87-16,STM91-01,TTC642の3株ではTGF-α抗体により著明な増殖抑制が認められた。同様にYAMRTの1株ではEGF抗体により著明な増殖抑制が認められた。これに対してTTC549ではTGF-α抗体では増殖抑制が認めず、TGF-α、EGF抗体の両方の添加によりはじめて増殖抑制が認められた.以上の結果より、MRT細胞株においてはTGF-α/EGFRまたはEGF/EGFRの2つの型のオートクライン機構が存在していること、TTC549の1株はTGF-α/EGFRまたはEGF/EGFRの二重支配により制御されていることが示唆された。
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