研究概要 |
1)アシクロビル(ACV)感受性単純ヘルペスウイルス(HSV-1 TAS)からのACV耐性HSV-1の作製:ACV濃度を徐々に高めた培地でHSV-1 TASを培養し,ACV耐性HSV-1を24株作製した. 2)ACV耐性HSV-1のチミジンリン酸化酵素(TK)遺伝子の塩基配列:24株のACV耐性HSV-1のうち,8株の遺伝子は430-436番目のGが7塩基続く部位にGが1塩基挿入され,Gが8塩基続く変異を起こしていた.2株は548-553番目のCが6連続する塩基配列のうち,1塩基のCが欠損する変異を起こしていた.また,2株は1071-1074番目に位置する4連続したCから1塩基のCが欠損する変異を起こしていた.このように24株のうち,12株はGまたはCが連続する塩基配列に,塩基の挿入または欠損という変異を伴っていた.その他の12株においては,8株がさまざまな部位に1アミノ酸変異をもつTK蛋白を,3株が1塩基置換による早期ストップコドン出現による短いTK蛋白を,1株が連続する塩基配列の欠損による短いTK蛋白を発現した. 3)TK活性とACVリン酸化酵素活性の測定:24株のACV耐性HSV-1のうち,2株がTK活性を親株とほぼ同等に発現するTK変異株で,残りの22株はTK欠損株であった.2株のTK変異株はともに1アミノ酸変異をもつTK蛋白を発現していた. 4)結論:ACV耐性HSV-1のほぼ半分は,TK遺伝子における連続するGあるいはCの部位に1塩基の欠損・挿入によるACV耐性を獲得し,30%はTK蛋白のアミノ酸変異によるACV耐性を獲得する.また,1アミノ酸変異によるACV耐性株8株のうち,4株はATP-binding siteやnucleotide-binding site以外の部位のアミノ酸変異を有していた.つまり,それら以外の部位におけるアミノ酸変異もTK活性やACVリン酸化活性に影響をあたえる.
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