研究概要 |
患者より摘出したPTHrP産生腫瘍infantile fibrosarcoma(OMC-1)の組織細片を7週齢オスヌードラットの背側皮下に移植し、経時的に採血を行い、血清Ca値、PTHrP値の変動を検討したところ、移植後6週頃よりCa値、PTHrP値の著明な上昇を認め、患者にみられたHumoral Hypercalcemia of Malignancy(HHM)と同様の病態を示した。そこで、このラットの血中ビタミンD代謝物を検討したところ、Ca値の上昇が軽度な間は血中1,25(OH)_2D値はむしろやや増加するが、Ca値が15mg/dlを越えて上昇した際には1,25(OH)_2D値は著明に低下した。このことから、血清Ca値の変動がこの担癌ラットの1α位水酸化酵素の活性調節に関わることが示唆されたので、担癌ラットが著明な高Ca血症を示した時点で骨吸収阻害剤であるビスフォスフォネート(YM529)を投与したところ、Ca値の是正とともに血中1,25(OH)_2D値は正常値を越えて上昇した。RT-PCR法により腎臓での1α位水酸化酵素の発現を検討したところ、高Ca血症時のOMC-1担癌ラットでは本酵素の発現が低下しており、YM529を投与した担癌ラットでは本酵素の発現が著明に増加していた。以上の結果は、このHHM動物モデルにおいて、Ca値の上昇が軽度な間はPTHrPはPTHと同様に1α位水酸化酵素の発現を増加させるが、著明な高Ca血症は1α位水酸化酵素の発現を抑制することを示唆する。また、OMC-1担癌ラットでは血中25OHD値の低下も認められたが、RT-PCRで検討した結果、担癌ラットでは肝臓における25位水酸化酵素の発現がむしろ増加していた。担癌ラットでは尿中への25OHDの漏出も認められ、血中25OHDの低下に関与した可能性が考えられた。
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