皮膚の老化をもたらす加齢および紫外線の細胞外基質代謝に与える影響みるため、継代数3〜5代の培養線維芽細胞を三次元培養し、真皮成分であるcollagen α1(I)、collagenase、elastin、elastase、decorinおよびversicanのmRNA発現をRT-PCRによって半定量した。加齢による老化については、若年者(11歳、12歳)と高齢者(75歳、77歳)から得た線維芽細胞を比較したが、いずれも明らかな差異は認めなかった。他方、若年者(22歳)より得た線維芽細胞を継代し、3代と9代の線維芽細胞について比較したところ、9代の細胞では3代よりcollagen α1(I)、elastin、decorin 、versicanのmRNA発現が増加していた。単層培養系と同様に本培養系でも、継代数の少ないものは多いものに比べて、細胞増殖能が高く、従って早期に定常状態に入ってしまうことが推定される。9代の線維芽細胞の細胞外基質のメッセージの増加は、3代の細胞ではすでに安定した状態にあるが、9代ではゆっくりと増殖を続けている途中であるために、細胞外基質産生が高いと考えた。紫外線による老化(光老化)については、同一者2例の日光露光部と非露光部皮膚から得た線維芽細胞について検討したが明らかな差異は認めなかった。若年者(11歳)と高齢者(77歳)から得た線維芽細胞に室温で10J/cm^2の長波長紫外線(UVA)を照射し比較したところ、両者の最も大きな反応性の違いは、高齢者由来細胞におけるcollagenase mRNA発現の亢進、elastase mRNA発現の抑制であった。若年者では逆の変化を示した。今後、UVA照射に対する基質分解系酵素のmRNA発現の違いを蛋白レベルで確認することが必要である。さらにこの系を用いて光老化を予防する薬剤のスクリーニングのシステムを確立する予定である。
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