研究概要 |
核DNA量の多寡は,様々な悪性腫瘍で腫瘍の悪性度や予後を反映するとされる。すなわちaneuploidの腫瘍はdiploidの腫瘍と比較し,生物学的悪性度が高く予後は不良である。そこで,悪性腫瘍の生物学的特徴である増殖,移転,浸潤のうち増殖に着目し,増殖能と細胞喪失の発現の差異と核DNA量の関係について頭頸部扁平上皮癌を中心に検討を行ない,以下の結果を得た。 1)aneuploidの腫瘍はdiploidの腫瘍と比較し,増殖能の指標と考えられるS期細胞割合(%SF)が有意に高かった。 2)aneuploidの腫瘍はdiploidの腫瘍と比較し,細胞喪失の指標と考えられる腫瘍細胞1000個中に含まれるアポトーシス細胞の割合(アポトーシス・インデックス)が高かった。 3)アポトーシス・インデックスと増殖能には,明らかな関連性を認めなかった。 4)放射線化学療法が奏効した群にaneuploidの腫瘍,およびアポトーシス・インデックスの高い腫瘍が多かった。 5)aneuploidの腫瘍は,CR導入後の遠隔転移率,および局所再発率が有意に高く,長期予後は不良であった。 6)diploidの腫瘍は,CR導入後の遠隔転移率は低く,長期予後は良好であった。以上のことから,aneuploidの腫瘍は,アポトーシスの発現により放射線化学療法が奏効するかに見えるが,増殖が活発であるため,転移能をもつクローンや放射線抵抗性クローンが誘導されている可能性が示唆され,その結果,長期予後が不良であったと考えられる。
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