研究概要 |
アミノ酸を母体構造に持つ新しい腎機能診断薬の開発を目的としてL-チロシンの誘導体の人工アミノ酸[3-I]-α-methyl-L-tyrosine(I-AMT),[4-I]-L-m-tyrosine(I-mTyr)を^<123>I標識及び^<125>I標識にて合成し,腎における膜輸送機能診断薬としての有用性の評価を行った.阻害剤としてプロベネシド,L-チロシン,D-チロシン,2,4-ジニトロフェノールを用いたラット腎皮質切片による集積阻害実験の結果,^<125>I-AMT及び^<125>I-mTyrは,^<14>C-チロシンと似た阻害を受けた。^<125>I-AMT投与後5分における犬の腹部のSPECTでは,良好な腎皮質の画像及び投与後15分をピークとするレノグラムが得られた。代謝物は,腎組織中及び血液,尿中の約95%以上が未変化体のままであった.^<123>I-mTyrを投与されたヒトのMIRD法による内部被曝線量の推定を行った結果既に報告のある^<123>I-AMTのものと同程度であった。 以上の様に本研究課題では,母体化合物であるL-チロシンとの比較検討から,これらの化合物が腎臓においてどの膜輸送機構に親和性を有するか等を含めた代謝機序の一部を基礎的に明らかにした.これらの化合物は,腎臓への高い集積及び速やかな尿中排泄と,放射性医薬品としての応用に必須な高い代謝安定性を具備しており,人工アミノ酸の腎臓での代謝を反映した新しいタイプの腎機能診断薬としての可能性が強く示唆された.
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