研究概要 |
アポトーシス、多核巨細胞の発生過程について、1)両細胞発生頻度の関連、2)細胞周期、3)微量元素動態(Mg,Zn動態)との関連性の3点について検討した。 1)両細胞発生頻度の関連:マウス移植腫瘍、Meth-A-fibrosarcoma,Sarcoma-180に、^<60>Co γ線を照射、照射後3時間、6時間、9時間、12時間、24時間、48時間後の腫瘍組織について、hematoxylin染色のcounter stainingを施行したTUNEL染色を施行し、アポトーシス細胞と多核巨細胞の発生率を発生百分率で算出、各経時的観測点における両細胞発生率の関連性を検討した。結果、両細胞間において、負の強い相関が認められ、両細胞の発生経路が、一つの細胞から分岐する事が考えられた。 2)両細胞の細胞周期動態に関して:上記腫瘍組織について、TUNEL染色(アポトーシス検出)とHistone H3 messenger RNA probe(S期細胞検出)の二重免疫染色を施行し、両免疫染色が陽生を呈した細胞をS期のアポトーシス細胞とした。一方、同腫瘍組織に対し、M期細胞を検出するMPM-II染色を施行した。結果約3%のアポトーシス細胞が両免疫染色陽生を呈し、僅かではあるが、アポトーシス細胞がS期から脱出する事が示唆された。また、多核巨細胞のhistone mRNA probeとMPM-II染色陽生細胞の割合が、正常細胞のそれとは有意な変化が認められなかった事より、多核巨細胞が、細胞周期を分裂せず、細胞周期を回り続ける事が考えられた。 3)微量元素動態と両細胞の発生について:上記腫瘍細胞について、Particle Induced X-ray Emission(PIXE)法を用いて、腫瘍組織中の微量元素濃度(Mg,およびZn)を測定した。結果、腫瘍組織内Mg濃度とアポトーシス発生の間には正の相関関係が認められ、多核巨細胞発生においては、Znとの正の相関が認められた。 上記1)から3)の結果より、アポトーシスと多核巨細胞は一つの経路から分岐し、アポトーシス、多核巨細胞のどちらかに進行するかは、組織内MgおよびZn濃度が関与する事が考えられた。
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