研究概要 |
臨床上、初回放射線治療では比較的低線量で縮小消失しても、再発時には放射線に対して抵抗性を示すことがしばしば経験される。再発時に放射線抵抗性を示す腫瘍においては放射線による損傷修復機能が亢進している可能性がある。放射線治療成績の改善のためには抵抗性獲得機序の解明と新たな治療方法の工夫が必要であり、その点に関して実験的研究をおこなった。今年度は単層培養細胞を用いてX線、重粒子線照射を行いコロニー法から放射線に対する感受性を比較した。用いた細胞はヒト由来の卵巣癌、膀胱癌、食道癌、頬粘膜癌細胞である。X線に対する生存曲線では、卵巣癌由来のHEC細胞を除き回復を示す肩(shoulder)が認められた。X線に対する感受性が一番高かった細胞はHEC細胞で一番抵抗性を示した細胞はA431細胞であった。一方、重粒子線(20keV/オ m,80keV/オmの炭素線および80keV/オ mのネオン線)照射では屑の消失が見られ、生存曲線の傾きはいずれも急峻となり重粒子線の方が生物学的効果が高いことが示唆された。照射後の治療抵抗性細胞のモデル作成を目的として0.5Gy照射を1、2、4、6、8、10回まで連日、または各日で分割照射しシャーレに播種し、形成されたコロニーから腫瘍細胞をクローニングし培養した。得られた細胞の放射線感受性をX線照射で検討したところ、HEC細胞由来の細胞で生存曲線に僅かに肩が認められるようになったが、他の細胞ではいずれも生存曲線には変化が認められなかった。これらの細胞に対し重粒了線照射を行ったところ感受性には変化は認められなかった。Flowcytemetryを用いてcell cycleの変化を検討したが細胞分画に明らかな変化は認められなかった。本年度の研究では一つの細胞でわずかにX線に対して感受性の変化が見られたが、放射線抵抗性を獲得することは非常に困難であることが示唆された。
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