研究概要 |
現在、体内に金属を埋め込む手法が、放射線科領域でも、Interventional radiology(IVR)を用いた金属ステント留置などで行われている。このような手技が発達するにつれ体内に各種の金属が存在するようになり、金属相互間の影響も出現すると考えられる。実際歯科領域では異なる金属の接触による電位差を生じるための腐食が問題となっている。血管内に留置したときの金属の腐食、溶解についての報告はない。電位差から金属溶出量をファラデーの法則に基づき推定できる。そこで今回我々は、先ず血管拡張術に実際に使用される金属ステントを用いて2種類の金属間での電位差を測定した。材料は素材がステンレスのZステント(以下Z)、316Lステンレスのウオールステント(W)、ルービンステント(R)、パルマッツステント(P)、ナイチノールのアキュフレックスステント(A)、ニッケルチタンのNTステント(N)の6種のうちの2種の各組み合わせで、各ステントをヒト血漿(37℃,Ph7,366)に1.0cmを浸し、高感度直流電圧電流計にてステント間の電位差を測定した。結果はプラス極側からA、P、N、R、W、Zの順となり2種のステント留置の際この順位の両極程溶出が増加すると考えられた。更に、1週間の観察期間としてこれらの金属の組み合わせで、溶出量の測定を施行したが、ヒト血漿の変性が見られたため、測定は困難であった。そのため、生理食塩水中に1週、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月間浸し、実験を行ったが、6ヶ月でも測定値が非常に低く、誤差が多いため、その信頼性に疑問があった。今後、測定期間の延長と、溶質の変性などの変化の防止のための手段を探究する予定である。
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