研究概要 |
心筋血流SPECT像における放射性光子の横隔膜減衰は下後壁の集積低下の原因となり,右冠動脈支配領域の虚血性心疾患の無病検出率を低下させる。横隔膜による減衰は横隔膜が低位にある吸気時には軽減されていると予想され,呼吸周期によりSPECTデータを収集し,吸気時データによるSPECT像を再構成することで偽欠損が軽減し,心筋血流SPECTによる虚血性心疾患の正診率の向上に結びつくことが期待される。そこで,呼吸同期SPECTを開発し,その有用性を検証した。 市販の呼吸モニターから呼吸カーブを検出し,一定の呼吸周期にトリガーを発生する増幅装置を開発した。呼吸カーブはトリガー発生装置において増幅後呼気相ピークの直後にトリガー信号を発生する。呼吸周期ごとのトリガー信号はSPECT装置の心拍同期用の接続端子より入力され,心筋SPECTデータの呼吸周期ごとの分割が可能となる。7名の健常男性ボランティアに呼吸同期SPECTを施行し、収集時間に影響する呼吸周期トリガー設定条件(平均呼吸周期±20%以内)から外れるトリガーの頻度を測定したところ15%以内留まった。得られた呼吸同期SPECTデータを16分割し、胆嚢集積直下に関心領域を設定した。胆嚢の上下動に伴う関心領域内集積の増域を呼吸フレームごとにプロットすることで呼吸カーブを得、呼気・吸気のピークフレームを決定した。呼気・吸気のピークフレームのprojection dataをそれぞれ処理した呼気・吸気SPECT像の心筋集積を比較したところ、吸気相では下壁は呼気相と比べ有意な高集積を示し、左室集積の均一性も有意に改善された。また、腹部集積からの散乱腺を呼吸と吸気相で比較すると、散乱腺は吸気相で有意に低値に留まった。呼吸同期SPECTによる下壁欠損の正診率向上の可能性が示唆されたが、今後臨床例への応用と検証が必要と考えられた。
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