研究概要 |
拡散テンソル解析は定量性に優れた拡散強調像の数値解析法であり、拡散係数Trace(D)と異方性anisotropyの観点から脳実質及び脳内線維結合の病的変化を評価する方法として注目されている。我々は、昨年度に引き続き、正常若年脳、正常加齢脳及び多発性脳梗塞脳の拡散テンソル解析を行い、得られたデータの妥当性と臨床的有用性について検討した。EPIを用い6つのmotion probing gradientの組み合わせによる拡散強調像、T2強調像、FLAIR画像と各補正画像の頭部横断像を撮像し、λ1,λ2,λ3の各固有値画像とanisotropyの指標であるfractional anisotropy(FA)画像を作成した。脳梁、放線冠及び大脳基底核に関心領域を設定し、各固有値、Trace(D)=(λ1+λ2+λ3)、FAを算出した。正常例におけるデータの変動係数は脳梁で高く、脳脊髄液の混入等による部分容積効果の影響が考えられた。正常例のうち若年脳と加齢脳では放線冠のFAに軽度の差異を認めるのみであった。一方各領域のTrace(D)は梗塞脳で上昇しており、特に大脳基底核、放線冠で大きい差異を認めた。脳梁のFAは梗塞脳で低下していた。更にFAとTrace(D)による2次元座標軸展開を行うと正常及び梗塞脳のdiscriminationが可能であった。拡散テンソル解析により、正常並びに病的組織のcharacterizationができる可能性があると考えられた。各パラメーターの加齢による影響は今回の検討では乏しかった。しかし関心領域に基づく計測では部分容積効果が問題となることから、今後更なる検討が必要と考えられた。
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