研究概要 |
平成10年度から11年度にかけて,表存性ヒト腫瘍に対する温熱放射線療法の抗腫瘍効果や加温時の腫瘍内温度をダイナミックCT検査から得られる腫瘍内血流因子から評価した。表存性腫瘍において,著効症例では治療前の腫瘍内造影増強効果は39.0HUであったが,治療中に26.1HUに低下したが,非著効例では各々46.4HU,49.6HUと軽度上昇を示した。このように,腫瘍内造影増強効果の治療期間中の変化は抗腫瘍効果によって異なり,統計学的にも有意差があった(p<0.01)。さらに,治療前と治療中の腫瘍内造影増強効果の比は加温中の腫瘍内温度と相関していた(p<0.05)。ダイナミックCTを用いた腫瘍内血流の評価は温熱放射線治療時の抗腫瘍効果や腫瘍内温度の先行指標になることが確認された。以上の結果の詳細についてはCancer(1999;86:177-185)において報告した。 ダイナミックCTによる腫瘍内血流は加温時の腫瘍内温度と相関を示し,加温によって腫瘍内血流が変化することが判明した。このことは温熱放射線療法に抗癌剤を併用したとき,抗癌剤の腫瘍内分布あるいは細胞内濃度が温熱療法によって変化することを意味しており,加温時の温度によって抗腫瘍効果が大きく変化する可能性がある。場合によっては中程度の温熱療法(mild hyperthermia)による治療の方が抗癌剤の腫瘍内濃度が増加し,抗腫瘍効果が増強する可能性が考えられる。そこで現在,マウスを用いて抗癌剤の移植腫瘍内分布および濃度とダイナミックCTによる腫瘍内血流との関連を評価している。
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