研究概要 |
健常成年男子8名を被験者とし、目的・方法・試験薬剤の特徴、起こりうる副作用について説明を行い、書面による参加の同意を得た。ジアゼパム10mg,ロラゼパム2mg、およびプラセボをそれぞれ2名ずつ1回服用してもらい、radiorecepter assay法により、血中濃度の測定を行いジアゼパムでは50分〜70分後に最高血中濃度に達し、ロラゼパムでは、2時間〜2時間30分後に最高血中濃度に達した。また血中濃度は漸減し、ジアゼパムでは、23時間後にほぼ半減し、ロラゼパムでは、12時間後に半減し、いずれも32時間後には、ほぼ消失した。 また服用前、服用後1、2、4、6、8、12、23、32時間後にStanford Sleepness Scale、関西学院大学眠気調査用紙の2種類の調査票で自覚的眠気調査を行い、さらにWord recall test、Sternberg's memory scanning task、Letter canellation taskなどにより短期記憶、長期記憶、および注意機能に対する影響を調べた。 長期記憶では、服用後の記憶がロラゼパムで有意により強く障害され、また短期記憶では、memory scanning taskによりジアゼパムは反応選択段階に作用し、またロラゼパムは記憶走査段階に作用するという結果が得られた。その他、注意機能の障害は血中濃度と相関し、眠気については、必ずしも血中濃度と相関せず、血中濃度が低下し体外に排出されたと考えられる時間でも、眠気は残存するという結果が確認された。 以上のことにより、記憶の障害は、記憶の獲得と固定の過程で起こり、力価が強く半減期の短い薬剤がより障害が大きく、短期記憶障害に関しては結果の異なる報告もなされているので、今後数種のベンゾジアゼピン系薬剤を用量を変えて研究のデザインを組む必要がある。
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