研究概要 |
我々は、これまでに報告のない独特な表面形質と共通した臨床病理学的特徴を持つ急性白血病の一群を見出し、myeloid/NK前駆細胞性急性白血病と命名し報告してきた。この白血病は高頻度に髄外病変を伴い、白血病はペルオキシダーゼ染色陰性であるが、骨髄球系抗原CD33、NK細胞抗原CD56,CD7、造血幹細胞抗原CD34が陽性で、腫瘤の生検像はリンパ芽球性リンパ腫に類似するという特徴を有した。AMLの治療に一旦反応するが再発し、長期予後は不良という共通の治療反応性を示した。昨年度は、全国調査の多数症例の臨床情報を解析することにより、疾患単位として確立しうることを示した。 本年度は、昨年度の全国調査のデータをもとに、DNA・RNAが利用可能な10例で詳細な解析を行なった。免疫グロブリン・T細胞受容体(TCR)遺伝子の解析では、1例で免疫グロブリン重鎖・TCRβ鎖・γ鎖・δ鎖のいずれもが再構成していた。その他の9例中では、免疫グロブリン重鎖・TCRβ鎖・γ鎖の再構成している例はなかったが、δ鎖のみ再構成している例が4例みられた。δ鎖の再構成パターンは、DDまたはDJの不完全型であり、特定の型に限定するということはなかった。CD3δ鎖、ε鎖遺伝子、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)遺伝子、TdT遺伝子は一部の症例で発現が認められたが、統一した傾向はなかった。共通する染色体異常が3番染色体短腕・7番染色体短腕に認められたため、これらの転座切断点近傍に位置するTCTA,HOXA9,Ikaros,NF kappa B3各遺伝子の異常がないか、サザンブロット解析を行なったが、再構成は検出されなかった。患者検体量の限界から、この白血病の発症に関与する責任遺伝子の単離・同定には至らなかったが、これらの患者白血病細胞から細胞株を樹立し、責任遺伝子を単離することが今後の課題である。
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