研究概要 |
IgA腎症の発症におけるT細胞レセプター(TCR)Vβ陽性細胞の関与を明らかにするために,IgA腎症およびIgA関連腎炎(紫斑病性腎炎,MRSA感染後腎炎)におけるリンパ球サブセット,とくにTCRVβ陽性細胞の選択性を末梢血および腎組織において検討した. 昨年度の検討の中で,FACScanを用いた3カラー解析による末梢血リンパ球のTCRVβ陽性細胞の測定では,IgA腎症群は正常対照群と比較してTCRVβ5.3およびTCRVβ-8の使用が有意に高率であることがわかった.今年度は,腎生検により得られた腎組織を用い,腎間質組織浸潤細胞において,とくにその表面抗原に関する検討を行った.IgA腎症症例38例の光学顕微鏡による解析では,メサンギウム細胞増殖の程度が軽度13例(34%),中等度17例(45%)であった.腎間質浸潤細胞は,27例(74%)が軽度で,6例(16%)が中等度であった.間質浸潤細胞の多くは免疫組織染色によりCD3陽性細胞であることがわかった.さらに,腎間質浸潤細胞のTCRVβ抗体による免疫組織染色では,末梢血リンパ球のTCRVβ5.3陽性細胞数と,腎間質浸潤細胞のTCRVβ5.3陽性細胞数の間に相関があり,さらに3年間の観察時点で血清クレアチニンが1.5倍以上になった症例(腎機能進行群)ではそうでない群(腎機能安定群)と比較して,腎間質浸潤細胞のTCRVβ5.3陽性細胞数およびTCRVβ8陽性細胞数が多い傾向にあることがわかった. 以上より,特定のTCRVβ陽性細胞の血中および腎組織中の増加が,IgA腎症の発症および進展に関与していることが示唆された.
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