研究概要 |
1.糖尿病性腎症腎生検組織のメサンギウム領域の定量化 昨年度に引き続き、2型糖尿病及び1型糖尿病患者の腎生検組織を電子顕微鏡所見を用いたpoint counting methodによりメサンギウム領域の拡大を客観的に定量化した。 2.光学顕微鏡レベルでの各種mRNAと蛋白の発現 IV型コラーゲン(α1 chain),MMP-2,3,TIMP-1の各プローブを用いて、非放射性標識法によるin situ hybridization法を継続して行った。mRNAの発現の程度を定量化するため、糸球体一つあたりの総細胞数を数えた後、その糸球体に発現している陽性細胞数を数え、糸球体の総細胞数に対する陽性細胞数の割合を百分率で求めた。求められた百分率とpoint counting methodにより求められたメサンギウム領域の拡大の程度との関係を検討した。その結果、IV型コラーゲン(α1 chain),MMP-2,3,TIMP-1の各mRNAの発現は、メサンギウム領域の拡大の程度とは負の相関を示した。すなわち、糖尿病性腎症のメサンギウム領域の拡大には、IV型コラーゲン(α1 chain)の産生亢進よりは、むしろMMP-2,3,などの細胞外マトリックス蛋白の分解酵素の産生の低下が関与していることが明らかとなった。また、蛋白レベルでの観察を行うために、各種抗体を用いた酵素抗体法を施行した。それぞれの蛋白の発現はmRNAと同様に発現していた。 3.電子顕微鏡レベルでのin situ hybridization法 凍結切片まで用いて様々な方法で電子顕微鏡レベルでのin situ hybridizationを試みたが、非特異的反応が完全に除去できるような方法は、残念ながら完成せれていない。 以上の結果をまとめて、論文を作製中である。
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