研究概要 |
メサンギウム細胞の増殖は、慢性腎炎の進行に大きな影響を有しているにもかかわらず、そのメカニズムについての結論は得られていない。申請者らは、メサンギウム細胞増殖の機序を研究する目的で、ラットメサンギウム細胞培養系を用いて、循環作動ホルモンをはじめとする各種薬物の細胞増殖に及ぼす作用を検討してきた。これまでに、adrenomedullin,ANP,CNP,静脈麻酔薬であるketamineなどが蛋白燐酸化酵素をを介してメサンギウム細胞の増殖を抑制することを見い出し、報告した(Nephron,1996;Naunyn-Schmiedeberg's Arch Pharmacol,1998;Anesthesia and Analgesia 1997)。また、狭心症治療薬であるnicorandilが、cyclic GMPを介してメサンギウム細胞増殖を抑制することを発表し(第42回日本腎臓学会学術集会)、心不全治療薬である塩基コルホルシンがcyclic AMPを介してメサンギウム細胞増殖を抑制することを第43回日本腎臓学会学術集会で発表予定である。さらにこれら細胞培養系での結果が、実際の腎炎においてどのような作用を有するかを検討するために、抗Thy1抗体を用いてラットに腎炎を惹起し、各種薬剤の持続投与を行った。経時的に血圧・腎血流を測定するとともに、尿蛋白定量、血清尿素窒素・クレアチニンの測定及び腎臓の病理学的検索を行った。現在、ketamineがThy1腎炎において細胞増殖を抑制することを見い出している。adrenomedullin持続投与についても実験継続中である。
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