研究概要 |
腎臓は体液の質・量の恒常性を維持する中心的臓器であり、その本体は尿細管における水・電解質の輸送である。この機能を担う各輸送担体の解析は、体液調節機構の理解に重要であるとともに、それらの異常によりもたらされる各種病態の解明および治療法開発につながる。 申請者は、酸の排泄や細胞内のpH調節に中心的な役割を果たす、ナトリウム/水素イオン交換輸送蛋白(Na/H exchanger:NHE)に注目し、解析を進めている。NHEは細胞膜に存在し、細胞内外のNa濃度勾配を駆動力として、Naと交換して細胞内からHを細胞外へと汲み出す機能を有する。哺乳動物において数種類のNHEアイソフォーム(NHE1-5)がクローニングされた。NHEは約800のアミノ酸残基からなり、膜貫通部位を形成するN末端500アミノ酸残基と、リン酸化など様々なpost-translational midificasionを受け細胞質蛋白と相互作用を有していると考えられるC末端300アミノ酸残基からなる。各NHEアイソフォームの細胞内局在は、C末端のpost-translational midificationのため各種報告では一定した結果が得られていなかったが、申請者は、腎尿細管由来のLLC-PK1細胞を用いてNHE-1 mRNAに対するantiseose oligonudeotideによる上皮側、基底膜側のNHE活性の抑制を検討し、NHE-1 cDNAが基底膜側のNHEのみをencodeしていることを示し、NHE-1の細胞内分布・局在を同定した(J.Cell.Physiol,1997)。 NHEの機能解析をさらに進める目的で、申請者はNHEの細胞内domainとinteractする細胞内蛋白をyeastを用いたtwo-hybrid systemによりスクリーニングしているところである。現在クローンを確認している段階である。得られた蛋白の機能から、NHEの機能を検討し直し、多彩な機能が示唆されているNHEの、他の細胞機能とのクロストーク解明が期待される。 上記のアプローチを進める傍ら、申請者は尿細管由来のOK7a cellへ移入したNHE-1が、基底膜に発現することを見いだした(J.Cell.Physiol,1999)。
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