研究概要 |
LOHと乳癌の術後予後との相関-3p25.1領域の検討 我々は遺伝子診断により乳癌の悪性度を評価する目的で,プロスペクティブにヘテロ接合性の消失(LOH)と術後予後との関連を検討し,昨年度より報告してきた。本年度,さらに症例を重て特定の染色体領域におけるLOHと乳癌術後予後との相関を検討したので報告する。 1989年2月から1993年9月の間に癌研病院において乳癌根治手術を施行し,切除標本からDNAを抽出し得た計504症例を対象とした。各症例毎に,染色体1p,3p,6q,8p,9q,11p,11q,13q,16q,17p,17q,18q,22qから乳癌で高頻度な染色体欠失が認められる計18領域において,各々LOHの有無を調べ,生存率を比較検討した。 今回新たに,3p 25.1のLOHが術後予後と相関することを見い出した:5年 無再発生存率では非LOH症例:LOH症例=82%:73%,p=0.0131;5年生存率全体では非LOH症例:LOH症例=91%:78%,p=0.0014と両群間にて有意に術後予後の差を認めた。また,多変量解析の結果,T因子やN因子とは独立して3p25.1のLOHが予後と相関することを認め,3p 25.1のLOH検索が乳癌術後の予後判定に有用な因子となり得ると考えられた。
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