研究概要 |
平成11年度はラット由来の大腸癌細胞株2株(RCN-H4,RCN-9)と膵癌細胞株1株(ACL-15)を用いて本実験を施行した。これら3株はいずれも高転移能を有することが知られている。これら癌細胞の標識はRhodamine 6Gによる蛍光標識法を用いた。方法:RCN-H4,RCN-9,ACL-15各癌細胞株をシャーレにて1X10^8個まで培養し、Trypsin-EDTA処理により細胞浮遊液を作製した。PBSにより2回洗浄したのち、Rhodamine 6Gを30分間接触させ、シリンジ内に採取、室温保存とした。次にWister系ラット牡4週齢を麻酔下に頚静脈及び、動脈にカニュレーション、気管内挿管を行ない、開腹した。肝左葉を脱転し、門脈に27G針をカニュレーションし、癌細胞を注入した。同時にビデオにより、肝臓内における癌細胞の動態を録画した。約10分観察後、肝臓を摘出し、ホルマリン固定標本を作製し、HE染色と抗サイトケラチン19抗体を用いた免疫染色により癌細胞の同定を行なった。結果:蛍光標識された癌細胞は門脈内注入直後より、グリソン鞘から類洞内を通過し、中心静脈へと流れていった。その速さはおよそ6m/sであった。類洞内に長時間滞留した癌細胞は認められなかった。HE染色の観察では門脈内の癌細胞は認識可能であったが、類洞内の癌細胞は困難であった。抗サイトケラチン19抗体による染色では、ラット肝細胞はほとんど染色されず、胆管上皮と注入した癌細胞のみが染色された。その結果、すべての癌細胞株で、一部のグリソン鞘内門脈に癌細胞の集塊が認められた。類洞内に漏出した癌細胞は極く一部で、中心静脈内には癌細胞が散見されるのみであった。考察:人工的に注入した癌細胞は血管内皮を容易に通過することが明らかになった。また、類洞内に一部、癌細胞が滞留していたが、その部位で留まっているか否かは解明できなかった。現在、癌細胞門脈内注入後7日目の肝臓を免疫染色し、類洞内の癌細胞の分布を検討している。
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