研究概要 |
多段階を経る癌の転移浸潤の成立過程においては、細胞接着因子を介した細胞・細胞外基質間接着が重要なカスケードの1つを担うと考えられ、癌細胞膜上に発現するインテグリン蛋白と転移、予後との関係が注目されている。今年度は更に胆管癌(34例)、胆嚢癌(27例)切除症例数を増やし、昨年の結果を踏まえ、癌原発巣およびその浸潤先でのインテグリン蛋白の発現と癌の転移浸潤及び予後との関係を詳細に検討を加え、更にインテグリンのmRNAの発現(RT-PCR法)を、またその局在をin-situ hybridization法にて検討した。加えて、αvβ3インテグリンのリガンドであるビトロネクチン蛋白の発現(ABC法)を検索した。その結果、(1)胆管癌、胆嚢癌いずれにおいてもn(-)症例に比べてn(+)症例で癌原発巣におけるαvおよびαvβ3インテグリンの発現亢進を認めた。またαv強発現群中において、αvとのヘテロダイマー形成体のうちβ3の発現は亢進を示したが、β5の強発現は認められなかった。また、リンパ節転移部、癌先進部では原発巣に比較して、いずれのインテグリンの染色性も低下する傾向が認められた。ly,v,pnとインテグリン発現との間には明らかな関係は認められず、独立したリンパ節転移関連因子の可能性が示唆された。(2)RT-PCR法、in-situ hybridization法において、胆管癌、胆嚢癌原発巣でのインテグリンαvβ3 mRNAの発現亢進を確認した。(3)癌転移、非転移リンパ節ともに、細胞外基質上にαvβ3インテグリンのリガンドであるビトロネクチン蛋白の同等の発現を認めた。αvおよびαvβ3強発現群で予後不良であった。【結語】胆管癌、胆嚢癌原発巣におけるインテグリン蛋白、中でもαvβ3の発現亢進がリンパ節転移の成立に強く関与し、予後を左右している可能性が示唆された。
|