研究概要 |
1.胃癌患者血清中のアンギオゲニン濃度の測定について. 胃癌患者48例について,手術前後の血清中のアンギオゲニンの推移をELISA法にて測定し比較した.対照として32例の健常人血清および23例の非悪性腫瘍患者の血清を使用した.胃癌においても大腸癌と同様に,健常人や非悪性腫瘍患者と比較して,癌の進行度に比例して血清中のアンギオゲニンが有意に上昇し,癌の切除によってこの値が低下することを示し,血清アンギオゲニン値は胃癌の進行度を反映することが示唆された.さらに血清中のアンギオゲニン値と組織中のアンギオゲニン値が比例していることから,血清中のアンギオゲニンは癌組織由来であることが示唆された.一方,非悪性腫瘍患者においても手術後に多少の血清アンギオゲニン値の低下が認められ,術後のアンギオゲニン値の低下は手術中の輸液による体液希釈の影響も示唆されたがその程度は軽く,血清中のアンギオゲニン値の低下は癌組織の切除が主な要困であると考えられた. 2.胃癌組織中のアンギオゲニンの発現について. 胃癌組織中のアンギオゲニンの発現について,ウエスタンブロット法(22例),免疫染色法(21例)により検討した.16例において胃癌組織でのアンギオゲニンの蛋白バンドが正常組織に比較して強く,17例において胃癌細胞にアンギオゲニンの染色性を認めた.さらに興味あることに,アンギオゲニンの局在は萎縮胃底腺細胞,腸上皮化生細胞,リンパ球にも認められ,過去に膵臓癌で報告したように,アンギオゲニンを介した癌と間質との相互作用が,胃癌においても起きていることが示唆された. 3.平成10年度に明らかにした大腸癌における知見,平成11年度に明らかにした上記の知見により,胃癌,大腸癌において,アンギオゲニンの発現が癌の生物学的悪性度を反映していることが示唆された.
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