研究概要 |
p16^<INK$>とRbは細胞周期G1期を制御する重要な遺伝子である。昨年の研究でわれわれはRb蛋白発現異常(発現欠失と過剰発現)が肝癌の進展、転移を促進するという知見を得られて、今年ひき続き肝癌進展、転移過程におけるp16^<INK$>の発現異常の役割及びRbとの関連性を検討した。P16^<INK$>蛋白欠失は肝癌原発巣と転移巣においてそれぞれ36%と74%と認められ、p16^<INK$>発現異常は転移と相関することが考えられた(P=0.001)。P16^<INK$>蛋白欠失はRb蛋白過剰発現と有意に相関した。P16^<INK$>とRbの発現異常は低分化癌、血管浸潤がある癌において高率に認められた。P16^<INK$>とRbの同時欠失は原発巣と比べて転移巣の方が有意に高率であった(P=0.01)。結論:p16^<INK$>とRbの発現異常は肝癌の進展、転移に促進的に働いている。 p21^<WAF1/CIP1 >はp53依存性またはp53非依存性的に細胞周期調節因子として作用している。p53機能喪失(mutationあるいはoncoproteinと結合)の場合、p53蛋白の半減期が延長し、過剰発現になる。本研究は肝癌におけるp21^<WAF1/CIP1 >とp53蛋白の発現を免疫染色により解析し、p21^<WAF1/CIP1 >蛋白発現とp53機能との関連性を検討した。肝癌65例の81腫瘍において、p53:43/81(53%),p21^<WAF1/CIP1 >:22/81(27%)の陽性率であった。p21^<WAF1/CIP1 >陽性率は、p53陽性群では43例の5例(11.6%)で、p53陰性群では38例の17例(44.7%)であり、後者で有意に高率であった(p<0.001)。p21^<WAF1/CIP1 >発現と臨床病理因子(腫瘍分化度、腫瘍径、肝内転移、脈管侵襲)との相関は認められなかった。p53の発現は、高分化群と比べて低分化群では有意に高率であった(35% vs 80%,p<0.01)。結論:肝癌において、p21^<WAF1/CIP1 >蛋白発現低下は高頻度に認められ,p21^<WAF1/CIP1 >発現は主にp53より誘導される。
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