研究概要 |
まず、直腸癌14例を対象に、開腹時のダグラス窩(pre)および直腸剥離操作終了時の骨盤腔(post)を生理食塩水100mlにて洗浄した。洗浄液は全量回収し、半分を細胞診に提出、半分を遠心分離器にて細胞成分を採取し凍結保存後、ISOGN法にてRNAを抽出した。直腸癌14例におけるRT-PCR解析の結果を組織学的深達度との関連で検討すると、preで陽性の4例の直腸癌の深達度はse(a2)〜ss(a1)であり、これらはいずれもpostでも陽性であった。postでのみ陽性であった1例はss癌であり、直腸剥離による癌細胞の漏出の可能性が示唆された。また、sm〜ss(a1)軽度の10例はすべて陰性であった。また、洗浄液細胞診の結果はpre,postを問わず全例陰性であった。以上より術中骨盤腔洗浄液を用いたGS04094のRT-PCR解析は従来の細胞診に比べより高感度に、癌細胞の漿膜面への露出あるいは直腸剥離操作に伴う漏出を検出することが可能であり、直腸癌の進展度評価に有用である可能性が示唆された。陽性例は遺伝子的に術後再発の高危険群と考えられるが、既存のPT-PCR法は全行程に数日要するため、解析結果は術式の変更や術中化学療法の選択に反映されない。そこで、我々は術中迅速遺伝子診断の検討をおこなった。LightCycler(Idaho Technology Co.)を用いたFluorescence RT-PCRにて癌の微小転移の半定量が可能であり、従来の定性判定に比べ、sensitivity,specificityともに優れていることが判明した(International Journal of Oncology,16,289-93,2000)。現在、直腸癌の神経温存の適応決定の指標として臨床応用している。
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