研究概要 |
【目的】大量肝切除後は、網内系機能も低下するため、術後肝不全の原因となる。の対策として種々のmetabolic regulatorとしての作用を有しているfructose-1,6-dipshosphate(FDP)のエンドトキシン肝障害に対する有用性について検討した。【方法】Wistar系雄性ラット250g(n=37)に、70%肝切除術を施行し、術後48時間にE.coli 055:B5由来LPS (Difco社,Detroit,USA)0.5mg/kgを尾静脈より投与、肝切除エンドトキシン負荷モデルを作成した。肝切除15分前とLPS投与15分前にFDP350mg/kgを尾静脈より投与し、対照群には、同量のグルコースを投与した。LPS投与後2,6,24時間に採血し、肝機能検査(T.Bil、GPT、m-GOT、ALP)、ヒアルロン酸、炎症性サイトカイン(INF-α、IL-1β)を測定した。LPS投与後2,6時間後に肝組織中過酸化脂質を測定し、また、LPS投与後24時間後にコンドロイチン硫酸鉄負荷試験によるKuffer細胞の貪食能も検討した。【結果】T.Bil、GPT、m-GOT、ALPは、両群ともLPS投与後6時間をピークに漸減し回復した。FDP投与群では、T.Bil、GPT、m-GOTは2,6,24時間で対照群に比べて低値であり、とくにGPTは、2,6,24時間後で、m-GOTは、24時間後で有意に低値であった(p<0.05)。ヒアルロン酸は24時間後にFDP投与群で低い傾向にあった。TNFα、IL-1は2時間後に最も高値を示し、とくにIL-1βは、2,6時間後でFDP投与群が有意に低値であった(p<0.05)。肝組織中過酸化脂質は2,6時間後でFDP投与群が、やや低い傾向にあった。Kupffer細胞の貪食能は両群で差はなかった。以上より、肝切除後エンドトキシンモデルにおいてFDP投与により、トランスアミナーゼの上昇は抑制され、肝実質細胞に対する有用性が確認された。しかし、非実質細胞の保護効果や網内系機能に及ぼす影響は確認できなかったが、炎症性サイトカインの上昇は低く抑えられ、臨床応用への有用性を示唆した。
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