研究概要 |
【目的】平成10年度の研究実績は,膵癌組織(4/6例)ではJT-95の発現があり,正常膵組織(0/4例)ではなかったことを明らかにしたにとどまった.そこで膵腫瘍に対象を広げ症例数を増やし,JT-95によって存在が確認されるシアル酸化ファイブロネクチン発現の意義とさらに予後と関連について検討することを目的とした.【対象と方法】対象は浸潤性膵管癌76例,嚢胞腺癌2例,乳頭腺癌2例,腺腫3例である.方法はJT-95抗体を用いた免疫組織化学染色(SAB法)を行った.検討項目はJT-95の発現の有無,部位,様式と予後および病理学的諸因子である.1)JT-95は浸潤性膵管癌の46例(60.5%)に発現した.一方,非浸潤性膵癌(嚢胞腺癌,乳頭腺癌)や腺腫では発現しなかった.2)JT-95の発現は癌浸潤部で明らかであった.3)癌浸潤部では,周囲の非癌部膵組織で腺房細胞間の微少膵管に強い発現が得られた.4)一方非浸潤性膵癌,腺腫でも腺房細胞間の微少膵管に発現した.5)浸潤性膵管癌のJT-95発現有無による予後を比較すると,JT-95発現群の予後が不良であったが有意差はなかった.【考察】シアル酸化ファイブロネクチンは膵癌の中でも特に浸潤性膵管癌に発現し,その発現部位は浸潤部に顕著であった.一方,腺房細胞間の微少膵間では良,悪性膵腫瘍ともに発現すると考えられ,浸潤性膵癌ではシアル酸化ファイブロネクチン発現し,同物質が周囲へ広がることによってさらに癌細胞が結合し,浸潤しやすい環境を作りだしている可能性が示唆された。
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