研究概要 |
大腸癌におけるp53のユビキチン(Ub)-プロテアソーム系による分解活性の検討を行い以下の実験結果、成果を認めた。 1.p53変異の検討 手術検体から得た大腸癌組織よりDNAを抽出し、CELP kitによりp53遺伝子の塩基置換を検出した。またp53蛋白質に対するモノクローナル抗体を用いて、パラフィン切片を免疫組織科学的に染色した。以上の検討にて変異を認めたものは、31例中21例(67.7%)であった。 2.p53 Ub化反応の測定 サンプルより組織抽出液を作成し、この中にUb化反応に必要な一連の酵素群(E1画分、E2画分、E3画分)が含まれるよう調整した。クロラミンT法を用いて放射線ヨウ素(^<125>I)標識したp53を作製、組織抽出液の中でATP、Ubを反応させた。脱Ub酵素阻害剤であるUbアルデヒドを加え、SDS-PAGEにより電気泳動しUb化された^<125>I-p53のバンドの有無を観察した。反応条件を変え検討したが、Ub化された^<125>I-p53のバンドは確認されず、組織抽出液中の酵素群の活性が低いことが考えられた。 3.multi-ubiquitin chain(MUb)、free ubiquitin(FUb)の測定 組織のUb化動態を検討する目的でMUb ELISA,FUb RIAの二種類のイムノアッセイ系を用いて、大腸癌(p53の変異+、p53の変異-)、正常粘膜においてそれぞれの分画を測定した。MUbは、正常粘膜に比べ大腸癌で有意に増加していた。またFUbも同様に正常粘膜に比べ大腸癌で有意に増加していた。大腸癌のうちp53の変異+のもの、p53の変異-のものとの比較では、MUb、FUbともに有意な差は認められなかった。
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