人工心肺後や補助循環後には、免疫能が障害され、患者はcompromised hostの状態となる。免疫能低下の主たる要因は、体外循環によるリンパ球減少であり、とくにリンパ球サブセットの面ではhelper T cell優位のリンパ球減少が生じ、免疫系全体に影響を与える。このようなhelper T cell優位のリンパ球減少におけるアポトーシスの関与を検討した。 1.末梢血中リンパ球は人工心肺後1日目には最低値となり、以後漸増し、術後5日目には術前値に復した。また、大部分の症例において、T cell のDNA ladder fragmentation(by agarose gel electrophoresis)が認められた。Two color flow cytometory法によるリンパ球解析では、helper T cell のFas陽性率は術前48.5%から術後69.6%と増加し、Fas/Fas-Lを介したアポトーシスが生じていることが示唆された。また、人工心肺後、helper T cell優位にMC540陽性リンパ球が末梢血中で増加することが認められ、MC540を介する経路でもアポトーシスがおきている可能性が示唆された。 2.長時間の体外循環であるPCPS(Percutaneous cardiopulmonary support)においても、同様にアポトーシスによるリンパ球減少が生じたが、生存例と死亡例における末梢リンパ球数の推移をみると、生存例ではlymphocytopeniaからの回復が早く、PCPS終了後5日目には正常値となるのに対し、死亡例ではlymphocytopeniaが遷延する現象が認められ、離脱後、lymphocytopeniaからの回復状態が予後を占う指標となり得ることが示唆された。
|