p16遺伝子は癌抑制遺伝子の一つであり、Chromosome segment 9p21上にあると推察されている。本研究では、癌抑制遺伝子p16の欠落発現と組織型、転移との関係およびapoptosisと関連した腫瘍の悪性度を明らかにし、実際の臨床とを関連付ける事を目的とした。当科において非小細胞肺癌(NSCLC)のため肺切除を受けた患者のブロック標本から肺原発腺癌18例、扁平上皮癌18例を選んだ。その内訳は、それぞれstage I 6例、stage II 6例、およびN因子(N2、N3)でstage IIIと診断された症例6例とした。当初Stouthern blottingを行いp16遺伝子の欠損や変異についてDNAレベルで確認する研究する事を予定していたが、得られた結果が本当の欠損なのか癌腫検体のDNAダメージによるものなのか判定が困難となるのではないかと危惧されたため、確かな結果を導き出すために、Southern blottingではなくFISHを行いて、DNAのDouble Strandを蛍光染色する方法をとった。Loss Of Heterozygosity(LOH)は、腺癌stage I 2例、stage II 1例、stage III 1例および扁平上皮癌stage II 2例、stage III 1例で認められ、19.4%(7/36)であった。Homozygous deletionは、腺癌stage I 2例、stage II 3例、stage III 1例および扁平上皮癌stage I 2例、stage II 2例、stage III 1例で認められ、30.0%(11/36)であった。p16遺伝子の欠落は肺癌で認められたが、組織型の違いやリンパ節転移の有無よる病期との関連は有意差をもって認められなかった。
|