研究概要 |
下垂体腺腫、下垂体癌及び正常下垂体の各々の組織よりRNAを抽出。チロシンキナーゼ型遺伝子のキナーゼドメインにおけるコンセンサス配列を利用しdegenerated primerを作成して、RT-PCRを施行。RT-PCR産物をベクターに組み込み、トランスフォーメーションした後に、各々について約100クローンをクローニングした。約200塩基の部分配列をシークエンスし、塩基配列を決定。ホモロジー検索にて発現を認めるチロシンキナーゼを同定した。 新たなチロシンキナーゼ型遺伝子は発見されなかったものの、下垂体腺腫での発現が報告されていない遺伝子が同定された。正常下垂体と下垂体腺腫に共通して発現を認めたものとしてはIGF1R,Tie-1,JAK1,FAKなどがあり、一方HEKfamily,EGFR,FGFR,pdgfR(a,b),c-metなどは下垂体腺腫においてのみ発現を認めた。 下垂体腺腫の手術や病理解剖で得られた組織標本を用いて、免疫組織学的手技を利用し、組織内発現を評価した。上記のチロシンキナーゼ型受容体のうち、c-metでは有意差をもって下垂体癌においての高度陽性を認め、悪性化への関与が示唆された。 c-met遺伝子の突然変異・再配列の検討を行ったが異常は指摘されなかった。c-metに対するリガンドであるHGFの負荷試験をラット下垂体腺腫細胞株を用いたin vitro assayを施行したところ、増殖また浸潤の促進が有意に認められ、下垂体腺腫における増殖・浸潤にc-metを介するsignal transductionの関与が示唆された。
|