研究概要 |
本研究は,神経幹細胞を用いて神経難病,とくに神経変性疾患の代表であるパーキンソン病の新たな治療法を見い出そうとするものである。 平成10年度に幹細胞の採取,遺伝子導入用ベクターの調整を行った。今年度はそれを基に,動物実験を行った。前半は,採取した幹細胞の大量培養法の改良,ベクターの発現の確認を行った。それらの結果を経て,後半は動物実験を行った。胎児ラット脳(悩室周囲)から採取した幹細胞を培養して増やした。 パーキンソン病モデルラットにこれらの幹細胞を移植して行動学的評価を中心に検討した。移植した細胞は,培養した幹細胞のみと,それにカテコラミン系の遺伝子(TH,GTP-CH1)を導入した遺伝子導入幹細胞の2種類である。幹細胞だけを移植したラットでは多少の改善が見られたが明瞭な効果は得られなかった。遺伝子操作を加えた細胞を移植したラットでは短期間(8週間)であるが改善が認められた。移植した細胞はどちらも少量であるが移植脳内に生着していた。これまでの報告では幹細胞が万全であり,それを移植するだけで神経が再生し改善が認められるとされていた。しかし,遺伝子操作を加えることによりその効果はさらに明確に現れることが証明された。 引き続き,長期的に行動学,組織学,生化学的検討を行っていく。またこの研究より他の神経疾患への新たな治療法となる可能性が考えられる。遺伝子導入幹細胞を用いて,脳梗塞や脊髄外傷のモデルでの検討も行っていく予定である。
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