研究概要 |
脳腫瘍の浸潤、播種のメカニズムにおいては未だ不明の部分が多いが、我々はヒト神経膠腫において神経細胞接着分子(neural cell dhesion molecule,NACM)の発現量が腫瘍の組織的悪性度及び生物学的悪性度に対し負の相関を示すことを証明した。そこで今回は、NCAM未発現のグリオーマ細胞に、アストロサイトの主要NCAMisoformであるNCAM 140kD(VASE+.-)isoformを導入し制御発現させることにより、(1)NCAM強制発現によるグリオーマの増殖能、浸潤能の変化の観察、更に挿入配列VASEの与える影響の検討、(2)NCAM制御発現による各種増殖因子、プロテアーゼ等の発現変化の検討を行い、ヒト神経膠腫の悪性化におけるNCAM発現低下の関与メカニズム、意義を明らかにすることを目的とした。 1、NCAM未発現のヒトグリオーマ細胞2種(T98G,U251MG)に、NCAM140(VASE+,VASE-)の発現ベクターをリポフェクチン法にて導入しNCAM140(VASE+)、NCAM(VASE-)を発現するstable transfectantを作成。 2、in vitroの検討 (1)増殖能への関与の検討:ヒトグリオーマ細胞において各クローンにおけるNCAM強制発現及び挿入配列VASEの増殖能に与える影響を検討する。更に各クローンにおいてoverexpressionされているサイトカインのmedium中の濃度をenzymeimmunoassayにて定量し、その増減を分析する。又、Epidermal growth factor、EGFreceptorの各クローンにおける発現量の相違をquatitativePCRにて検討する。 (2)浸潤能への関与の検討:NCAM強制発現及び挿入配列VASEの浸潤能に与える影響を検討する。又悪性腫瘍において各プロテアーゼの酵素活性、発現量をgel zymography、quantitative PCRを用いて分析し、各クローン間での対比検討を行う。 3、in vivoでの検討 ヌードマウス皮下への腫瘍細胞移植及び頭蓋内移植モデルを用い、腫瘍サイズの測定(caliperにて)、動物生存期間、腫瘍浸潤所見などから、各transfectrantにおける増殖能、浸潤能のin vivoでの変化を検討する。本実験は現在進行中である。
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