研究概要 |
下垂体前葉細胞におけるsuperoxidedismutase(SOD,EC1.15.1.1)の発現を免疫組織化学および一部insituhybridization法を用いて検索した。Mn-SODとGuZn-SODは細胞質内の各々顆粒状、び慢性染色像として、各々184±62%、559±133%の正常前葉細胞で陽性を示した。両者の割合に相関はなく、年齢とも無関係であった。前者の分布はcytochrameoxidase(COX)およびmitochondrialprotein(MP)陽性細胞の分布と一致した。 急性期梗塞、リンパ球性下垂体炎、膿瘍などおもに炎症所見の強い前葉病変の辺縁の前葉細胞にMn-SOD発現の増加を認めた。CuZn-SOD,COX,MPに変化は見られなかった。腺腫辺縁の前葉細胞はMn-SOD,COX,MPいずれも良く発現していた。前葉細胞は酸化的ストレスに対しMn-SODを発現する能力が高いと考えられ、その発現にはサイトカインなどの介在物質と、COXに代表されるミトコンドリア呼吸の状態の両者が関連しているものと推測された。 一方、非機能性腺腫、機能性腺腫および正常前葉内にはMn-SOD,COX,MPにより顆粒状に強陽性に染色される大型細胞が存在し、オンコサイト(膨大細胞)と考えられた。本細胞は高齢者に多い、ホルモン活性の低下(一部ゴナドトロピンと関係)など共通の所見が認められ、また機能性腺腫では、成長ホルモン腺腫(特にfilorousbodyをもつもの)に多く、再発で増加し、増殖能(Ki-67指数)と相関していた。前葉細胞におけるオンコサイト化は、過齢や分化度の低下と関連しているものと考えられた。
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