研究概要 |
アコースティク・エミッション(AE)法は非破壊検査法の一つに分類されており,構造体の健全性評価に応用されている.著者は,AE法により治癒過程にある仮骨の降伏強度が非破壊的に測定できることを,ラットを用いた動物実験により明らかにした.生体内で仮骨組織からのAE信号の計測が可能であれば,降伏強度を非破壊的に推定できるはずであるという仮説を検証するために以下の研究を行った. 創外固定症例35例に対して通常のレントゲン検査に加えてAE法によりその骨癒合過程をモニタリングした.術後経過中に創外固定装置を一時的に除去した状態で,骨内に刺入されているピンまたはワイヤーに圧電センサーを固定し,患肢部分荷重を平行棒内で行った.AE信号が計測されはじめた荷重量を仮骨の降伏強度としその推移を検討した.また,リハビリテーション・プログラムにおける患肢の許容荷重量は,測定された降伏荷重量をもとにして試験毎に決定した.その結果,経時的にAE法による降伏強度を測定した15症例では骨癒合の進行にともなって有意な降伏強度の増加を認めた.AE法による降伏強度の増加は、レントゲン写真による骨癒合評価とは必ずしも一致しなかった.これらの結果は,臨床的にAE法を骨癒合評価法として応用できる可能性を示唆するものであり,上記の仮説が検証できた.また,通常のレントゲン写真に加えてAE法により骨癒合完成時期を決定したところ97%の症例で固定器除去後の再骨折や変形などの大きな合併症を認めなかった. 今後の課題としては,いかに計測精度をあげるかという点であり,超音波法等の他の非侵襲検査を併用する集学的モニタリング法の確立が必要であると考える.
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