研究概要 |
【目的】Pedicle screwを用いた脊椎後方固定術は、脊椎損傷や脊椎疾患の治療に広く使われているが、最近screw looseningやscrew breakage等の合併症も多く報告されてきている。本研究の目的は、pedicle screwingの結果起こる椎体及び椎体内海綿骨の状態を、海綿骨strainの計測により検討することである。 【方法】6体のヒト新鮮屍体の第10から第12胸椎椎体を使用した。平均年齢は75.5歳(69-82)であった。標本は軟部組織除去後、椎弓面で10mm厚に正確にスライスし、T10とT12の海綿骨領域にPMMAを流し込み、この部で骨折を来さないよう強固にした。また、T10の上部終板とT12下部終板に、各々の圧盤機に適合するようにPMMAで鋳型を作製した。標本はX線装置の備わったコンピューター制御の自家製圧迫フレームに設置し、以下の条件にて荷重を加えた。1)before screw placement,2)after screw placement,3)after screw removal。Screwは4.75mm×35mm pedicle screwを用いた。X線撮影は0Nと150Nの荷重下にて行い、得られたX線写真は1024×1024の解像度の16bit digital cameraで解析した。第11胸椎海綿骨の関心領域は、Patran3.0にて51×41(=2091)の区画に分けtexture correlationを用い、各々の区画の海綿骨strainおよびそのstrainの椎体内分布を計測した。 【結果】Screw挿入前の海綿骨strain分布は椎体内全域にまだらに存在したが、相対的に均一であった。Screw挿入後はhigh strainがscrewの周囲に集中し、特にscrew先端部周囲で顕著であった。Screw抜去後のstrainは、screwが存在していた部に集中していた。Screw挿入後と抜去後のmean compressive strainsのhigh rangeは、screw挿入前よりも有意に高値であった。Mid rangeとlow rangeは3群間で有意差を認めなかった。 【考察】本研究により、pedicle screw挿入後にpedicle screwに接する周囲の海綿骨strainが著明に増大すること、screw抜去後はhigh strainが、screwが存在していた部に集中していたことが示された。これらは、pedicle screwingは椎体内海綿骨に局所的な歪みをもたらすこと、screw抜去後の部位が予想以上に脆弱化を呈することを示唆した。
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