研究概要 |
脳幹網様体コリン作動性神経伝達は、意識、呼吸循環、疼痛感覚や筋のトーヌスの調節に重要な役割をはたしていることが報告されている。この脳幹網様体コリン作動性神経が吸入麻酔薬の作用発現および疼痛反応に関わっているかを検討した。 方法: 麻酔下のラットで、脳定位固定装置を用いて橋網様体にガイドカニューレを埋め込んだ。数日後から以下の3つの実験を行った。各項目において、まずカルバコール(0.5-10.0μg)を橋網様体に微量注入し、その用量依存性を測定した。次に、ムスカリン受容体遮断薬アトロピン(4.0,12.0μg)、または、ニコチン受容体遮断薬メカミラミン(1.0,4.0μg)を同部位に前投与し、カルバコールの効果の変化を検討した。 1. ハロセン麻酔必要量: minimum alveolar concentration(MAC) 2. 麻酔回復時間: 5分間3%ハロセン麻酔後、正向反射が回復するまでの時間 3. 鎮痛効果: tail flick latency(非麻酔下のラットで測定) 結果: カルバコールは用量依存性にハロセンのMACを低下させ、また、麻酔回復時間を延長した。アトロピンの前投与はカルバコールによるMACの低下を抑制したが、メカミラミンは抑制しなかった。カルバコールによる回復時間の延長は、アトロピン、メカミラミンどちらによっても短縮した。カルバコールは有意にtail flick latencyを延長させたが、容量依存性は明らかではなかった。アトロピン、メカミラミンともに、このカルバコールの鎮痛作用を抑制した。 結論: 本研究の結果は、橋網様体におけるコリン作動性神経の興奮が、ハロセンの麻酔作用に関与していること、および鎮痛作用があることを明らかにした。
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